まさか!と思い、携帯電話を発信した。
「もしもし、長谷川ですけど、香山さん、どうしました?」
「えっ!今、長谷川さんどこですか?駅に着かれたら電話ください。迎えに行きますから」
「新潟にいますけど、あっ!今日講義でしたか?すっかり忘れていました。ごめんさい。」
その時間は午後一時前だった。志澤塾の講義は、午後一時半からである。
急遽私は、或る二世経営者のホームページから、今月26日の私の予定講義テーマである『真のCSとは?』に該当する項目を選び出し、取り敢えず資料らしきものを作成した。
一つは、第三部の『あとがき』と、第一部第三章『CSは新入女子社員が教えてくれた』を抜粋して、塾生に配布した。
それらを朗読しながら、私の引き出しの中にある関連する項目を思いつくままに取り出し、説明を加えながら講義を進めていった。塾生には申し訳なかったが、その日はなんとか取り繕った。
私は、《CS》は突き詰めれば《ES》だと信じている。社員の全てが満足している企業はないが、少なくとも不満だけは抱かせてはならない。社員が不満を抱えていては、お客様に満足は提供できない。CSの基本的な考え方は《お客様視点》である。しかしながら大半の企業は、「お客様第一主義」と謳ったマニュアルを伴った供給者論理である。
長谷川氏に話は戻す。
彼はベジタリアンである。筋金入りのベジタリアンである。そのいきさつは、彼はもともとミュージシャンだった。しかし行き詰まり、雪深い新潟の十日町をさまよった。2メートル近い雪の中を腰まで埋まりながら歩いていると一匹のウサギに出会い、必死に生きている姿に感動を覚え、自分の弱さを恥じて勇気を貰ったのだそうだ。自分の師匠は《ウサギ》である。ゆえに師匠は食べられない、と悟り、それを機にベジタリアンを通している。40年も前のことである。
今月26日、《宇宙感応》というテーマで話してくれる。
私もどんな話をしてくれるのか楽しみにしている。いい加減だが、憎めない人物である。

