帰燕抄

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『帰燕抄』は私の誇れる友人の一人である「土方公二」氏が初めて上梓した句集の題名である。師である井上弘美女史の冒頭の序文は心温まる懇切丁寧な解説で、私のような無知な凡人にでもよく伝わった。彼の根底に流れる優しさ、清涼感、望郷の念、また正義感が、彼の句によって我々に話しかけてくれた。
「汀」(井上女史が主宰する月刊句集)でしか目にすることがなかった彼の句を、今こうして360句の俳句と向き合うとき、その無限の命を感じて身震いする。
彼とは田舎の山崎高校時代に知り合い、今日まで長きに亘って親交が続いている。彼はもちろん我が校きっての秀才で京都大学に進学し日産自動車に入社した。持ち前の語学力と人間力で大半が海外勤務だった。私の結婚式でも素晴らしいスピーチをしてくれた。定年を迎えるころ体調を崩したが、懸命のリハビリと研究心で回復した。そのころ俳句と出会い井上弘美という素晴らしい師と邂逅し、彼の才能が開花していったのである。
過去に三回ほど志澤塾で俳句講座を開催して頂いた。来年1月早々に講座をお願いしている。彼の句をいくつか紹介する。
清明の 産屋さざなみ あかりかな
父母に 永遠の帰省子 稲の花
箱眼鏡 外せば父も 母もなし
少年に 帰燕の空の うすづけり
異つ国に 母の訃霧の ななかまど
流氷の 啼けば細りぬ 月の鎌
雪激し 長子は継がぬ 真木の山
枇杷の花 母は生涯 目分量
野を焼いて 闇よみがへる 伽藍かな
内陣を 飛べる沓音 夜の梅
綿虫と ゐる残照の 消ゆるまで
私は川柳紛いの俳句でも詠むか?
例 カレー食う 男二人で 大暑かな
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