長い重い一日

彼は湘南ボーイである。

今回も奥様と茅ヶ崎駅で待ち合わせた。東京駅から東海道線で約一時間。新幹線以外に列車に乗る機会が少ない私は、様々な人いきれでちょっと疲れる。昨年訪れた病棟ではなく、リハビリを中心とした病棟に変わり、駅からも徒歩で10分くらいの距離である。
午後一時過ぎに待ち合わせていたが少々早く着き、駅の構内で簡単に昼食を摂って、駅の改札口辺に行くと奥様の姿をとらえることができた。面会時間は午後一時半からだそうだが、とりあえず病棟に向かうことにした。面会カードをもらい交渉すると、どうぞ、ということになり病室に向かった。
「おい、香山だぞ」というと、ニコッと笑ってくれた。マスク越しだが嬉しそうな表情が窺えた。約一年前に脳出血で倒れ今を迎えている。彼の笑顔に、思わず私の涙腺が緩みそうになる。大学時代に一気に遡る。私は彼に何一つ勝るものはなかった。ダンス・ビリヤード・麻雀(私が教えたのにも関わらず、まさしく出藍の誉れである)将棋・もちろん頭脳・唯一彼が私に及ばなかったのはゴルフ。言葉ではままならぬ会話を思いで交わしながら、小一時間ほど滞在し病室を後にした。

彼は正真正銘の《湘南ボーイ》である。

また来る。今度はせめて車椅子を押させてほしい、と願いながら・・・

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