町家・志賀先生・THE家

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2月11日の講座は志賀先生の『町家に学ぶ~時の積み重ねと人の知恵~』である。
私も心待ちにしていた講座の一つだった。
志賀先生との出会いは、先生が兵庫県立大の教授の時、大学の卒業生の紹介だった。当時私は《住まいを考える会》というグループの垣根を超えた研究会を作り、月に一度くらい勉強会を開催していた。研究テーマも一段落したので、私はかねてより抱いていた構想に取りかかることにした。
その構想とは、斬新でなおかつ住み心地の良い住まいを創りたかったのである。私の頭の中には出来ていたのであるが、それを実際の形に表す術が不足していた。社員の中の一人に「君の大学で私が思っているような住まいを実現するのに相応しい先生はいないか?」と尋ねたところ、志賀先生の名前が挙がった。10数年前の事である。
私は、研究会も会議もそうであるが、絶対私からは結論は出さない。メンバーに考えさせ答えを導くようにする。結論までには多少時間は要するが、実現化が全く違う。自分たちが出した結論は、思い入れもあり、自ら実現化に向けて真剣度が強く成功する確率が高くなる。
約2年の年月を要し出来上がったのが《THE家》である。
7年間ほどモデルハウスとして活躍したが2年前に買い取った。そのTHE家は今現在、茶室『波裡庵』を併設し、《志澤塾》として生まれ変わり、私を含めた塾生たちの学びの館になっている。
先生は、パワーポイントを使いながら、町家の4つの定義、すなわち①ゼロセットバック(敷地いっぱい使う)②環境自成(中庭・坪庭・パティオ)③沿道型④アーバンユニットとして都市組織を構成する、を挙げられた。日本では平安時代から存在し、ヨーロッパにおいては至る所に見ることが出来、特にイタリアのボローニャは町そのものが「町家」である、と話された。
最後にまとめとして、「変えることの出来るものは勇気を持って変え、変えられないものは冷静に受け入れ、識別する知恵を人間は持たねばならない」。そして芭蕉の『不易流行』という言葉を我々にに贈られ、2時間の講義は瞬く間に終了した。
久しぶりにお会いしても、謙虚で聡明なお人柄は変わらず、志澤塾に春風のような爽やかさを残していただいた。

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